雨の日のバス停
2007年1月27日数年前の話。ぽつぽつと雨の降る日、バス停は言った。
「何を待っているのです?」
おかしな問いだ。私は首をかしげて答えた。
「バスです。」
「何故?」
バス停も首をかしげている。
ここはバスを待つ列の先頭であるのに何故とはまた奇妙な質問だと思った。
「あなたはバス停なのだから、ここでバスを待つのは当然でしょう。」
「ああ、なんと。」
バス停は嘆いた。
「可笑しな事ですが、私は今の今まで自分がバス停だということすら知らなかったのです!」
バス停は嘆き続けた。涙こそ出ないのであるが、代わりに雨が激しくなってきた。
私は哀れに思い、少し考えてから、言った。
「それはもっともなことです。」
バス停はなおも嘆き続けた。
「お気になさらず、どうぞお笑いくださいませ。」
私は続けた。
「ここには、鏡がありません。自分の姿など、見えるはずも無いのです。」
「鏡?」
バス停が止まった。
「鏡とは、何です?」
「自分の姿を映すものです。」
バス停は少し考えるように唸ってから、再び嘆くように言った。
「鏡を持っていないとは、私はなんて不幸なのだろう。」
「そんなことは、ありません。」
私は答えた。
と、丁度その時、嘆き続けるバスをの後ろに、小さなバスが到着した。
バスはぷしゅう、と音を立てて扉を開いた。
私はカサをたたみ、バスに乗り込みながら、付け加えた。
「あなたがそうして話しかければ、いつでも誰かがあなたの鏡になれるのですから。」
数人の客が乗り込み、煙を吐いてバスは出発した。
そんな数年前の話。それ以来バス停とは会っていないが、
今もそこに立って誰かと話しているらしい。
「何を待っているのです。」
バス停は言う。
=
「何を待っているのです?」
おかしな問いだ。私は首をかしげて答えた。
「バスです。」
「何故?」
バス停も首をかしげている。
ここはバスを待つ列の先頭であるのに何故とはまた奇妙な質問だと思った。
「あなたはバス停なのだから、ここでバスを待つのは当然でしょう。」
「ああ、なんと。」
バス停は嘆いた。
「可笑しな事ですが、私は今の今まで自分がバス停だということすら知らなかったのです!」
バス停は嘆き続けた。涙こそ出ないのであるが、代わりに雨が激しくなってきた。
私は哀れに思い、少し考えてから、言った。
「それはもっともなことです。」
バス停はなおも嘆き続けた。
「お気になさらず、どうぞお笑いくださいませ。」
私は続けた。
「ここには、鏡がありません。自分の姿など、見えるはずも無いのです。」
「鏡?」
バス停が止まった。
「鏡とは、何です?」
「自分の姿を映すものです。」
バス停は少し考えるように唸ってから、再び嘆くように言った。
「鏡を持っていないとは、私はなんて不幸なのだろう。」
「そんなことは、ありません。」
私は答えた。
と、丁度その時、嘆き続けるバスをの後ろに、小さなバスが到着した。
バスはぷしゅう、と音を立てて扉を開いた。
私はカサをたたみ、バスに乗り込みながら、付け加えた。
「あなたがそうして話しかければ、いつでも誰かがあなたの鏡になれるのですから。」
数人の客が乗り込み、煙を吐いてバスは出発した。
そんな数年前の話。それ以来バス停とは会っていないが、
今もそこに立って誰かと話しているらしい。
「何を待っているのです。」
バス停は言う。
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